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カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇のnaomiのレビュー・感想・評価

3.0
知らざれる天才彫刻家カミーユ・クローデル。
彼女は「考える人」で有名な彫刻家ロダンのモデル兼弟子、愛人でした。19歳で弟子入りし、(ロダン42歳)2人は愛し合うようになりますが、ロダンには結婚はしていないものの内縁の妻ローズがいたため三角関係に。
カミーユは類稀な美貌の持ち主で若さと才能溢れる存在。ローズは売れない頃から支えてくれた癒しの存在。ロダンはどちらかを選ぶことが出来ず、その月日は15年間も続きました。(ロダン…最悪。)
カミーユはロダンの子を妊娠するも中絶、結局ロダンはローズのもとへ帰ってしまいます。ショックと絶望でカミーユは心を病み、40代で統合失調症を発症しました。

家族によってパリ郊外の精神病院に入れられたカミーユ。面会に来てくれるのは弟だけでした。晩年は誰とも口をきかずに、ロダンへの恨み、憎しみと周囲の患者を見下すことで自分を保とうとしていたらしいです。この作品はおそらく40代から50代のカミーユを描いたもの。

もう観ていられない。だって希望も何もない。カミーユはとても静かで感情を振り乱し発狂する姿は見当たらない。けれどとにかく辛い。
カミーユはとてもプライドの高い人だったんだろうと思います。「ローズより自分の方が若さも才能もあるのに。彼と一緒にいる時は自分の作品そっちのけで、犠牲にしてきたのに。何でよ、どうして?」
最悪の別れの後、カミーユは深く深く傷つきながらこんなことを思ったんだろうと思います。そしてこの思いにとらわれしまったのでしょう。(若かりしカミーユの姿は作品内では描かれていないけれど、想像せずにはいられなかった)
カミーユにとっては初恋であり、たった一つの恋だったのだから、気持ちも分からなくもない。だって、今までの人生、ロダンに捧げてきたも同然。あまりに真っ直ぐで純粋な愛を失ったカミーユ。ロダンと別れてから作った作品は”ロダンのマネだ!”と批判されたそうです。色んな人に陰口を言われること、別れても尚、ロダンという大きな存在が仕事にまで影響してくること、忘れようとしても難しい要因がたくさんあったように思います。
カミーユ自身が自らを苦しめる破滅への道を歩んでしまったこと、彼女を立ち直らせるために家族や周りの人が出来たであろう助けがなかったことが本当に哀しい。そして、人との出逢いがこんなにも人生全てを変えてしまうなんて…切ないです。
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