ポール・トーマス・アンダーソンの『インヒアレント・ヴァイス』という作品の中で主人公の私立探偵演じるホアキン・フェニックスが、ぐちゃぐちゃに潰れた赤ちゃんの死体(?)か何かの写真を見て目をひん剥いて絶叫するという不謹慎だけど笑える有名なシーンがあって、この映画は、まさに主演のライアン・ゴズリングが、ホアキンが『インヒアレント・ヴァイス』で見せた不謹慎な顔芸、声芸を全編通してやり尽くしてる映画だと思った。ちょうど『インヒアレント・ヴァイス』とは時代設定や、一人の消えた女性を捜索する私立探偵モノというジャンルまでがほとんど一緒で、あの映画をひたすらに取っつきやすく、笑える映画にしているという印象を受ける。作品全体のムードは軽いんだけど、芯は一本確実に通っていて、ライアン・ゴズリング、カート・ラッセルのバディーが格好良く見せられていて大変好みな作風だった。
オープニング、スモッグに煙りながら怪しげに光るロサンゼルスの、バッチリとキマった夜景の画が、そのワンシーンだけで終わらずその後の伏線としてちゃんと活かされているのには感心してしまうし、この映画にはそんな風な細かな伏線が数多く用意されていたように思う。個人的にこういった謎が謎を呼ぶノワール映画は大好きなので、ぜひ続編も作っていただきたいといったところ。この軽い気持ちで笑って見られる作品ムードもめちゃめちゃ気に入ってしまった。
ライアン・ゴズリング、『ラ・ラ・ランド』公開してる裏でこんな面白いことやってたんだなあ。
