キューブ

デッドプールのキューブのレビュー・感想・評価

デッドプール(2016年製作の映画)
3.5
(16年6月6日 新宿ピカデリー 3.5点)

コミックファンからは長々と実写化を待望され、幾度となく頓挫しかけた作品である。紆余曲折ありながらも、これほどの評価を受けるに至ったのは、なかなか見当たらないのではないだろうか。

そもそもデッドプール(ウェポンXI)そのものは「X-MEN ZERO: ウルヴァリン」に登場しているが、どちらかというと名前を借りただけの別物であった(事実、今作品においても「被せる形」でセルフパロディ化されている)。しかし、今作ではスラム育ちの傭兵「ウェイド・ウィルソン」がきちんと形成され、ファンにとっても納得の仕上がりであろう(スタン・リーもカメオ出演しているが、いつも以上にノリノリである)。

しかし、それは演じる役者にも大きく左右される要素だ。同名のほぼ別のキャラクターを演じた例はあまり見ないが、少なくともライアン・レイノルズは良い意味で期待を裏切った。
いつもの彼は、悪い演技ではないが、間抜けな男かイマイチパッとしないアクション作品への出演が多く、作品に恵まれているとは言い難かった。その点、今作は間違いなく彼の代表作になるであろう。軽快でコミカルなジョークはもちろんの事、意外にも持ち合わせた演技力によりシリアスなシーンもソツなくこなしている。何より、第四の壁(デッドプールの一種の能力に位置付けられるもので、自分が空想の作品に出演していることを自覚している)を破る上で、レイノルズのパッとしない経歴はうってつけだろう。

その反面、今までのX-MENシリーズと比較しても、どうしても低予算な面は目につく。コロッサスのCGは、前作よりも明らかに劣化しており、その点に関してはシリーズ最低の「ZERO」とどっこいどっこいだ。

また、話のスケールが小さいのもマイナス面に挙げられる。キャラクターは邪道なのに、ストーリーは王道そのもので面白みに欠ける。一応、時系列の並び替えなど工夫は見られるが、それでもあっさりしすぎている(とはいえ、それがテンポの良さにつながってもいるが)。マシンガンのようなジョークの数々が無ければ、映画全体の評判は間違いなく低下していただろう。

敵役のフランシスはマイナー過ぎて、ボスという大役を張るにはイマイチ物足りないし、特殊能力も地味以外の何物でもない。まだ、タスクマスターなどの方がエンターテイメント性に長けていただろう。(とはいえ、その予算が少ないことすらも自虐的にネタにしているのは、ハングリー精神旺盛で見事ともいえる。)

しかしながら、そういったマイナス面を考慮しても、この映画のポップコーンムービーとしての優れたアクションやコメディ要素をかき消すことはできないだろう。グロテスクなものに抵抗が無ければ、近年のアメコミ映画の中でも一際優れた作品といえる。

最後に、いつものマーベル作品のようにエンドロール後にもお楽しみが待っている。第四の壁を用いたパロディなど、この映画以外にはできないだろう。
(1回目 16年3月3日 マドリード)
キューブ

キューブ