田中田中

百日紅 Miss HOKUSAIの田中田中のレビュー・感想・評価

百日紅 Miss HOKUSAI(2014年製作の映画)
4.5
藤原「歯痒いとこあるよね。んっ!てとこ作んないでさ、こう、ふわって穏やかににすませてく辺りっつー感じがさ。なんつーのか、この…どん!と当たるってのよりもさ、そこはかとなくという感じが上品だと思うんだけど。却ってもうちょっと行ったれよ、とか。思っちゃうんだけど。」
原「原作に合わせたってのもあるんだけど。登場人物が誰も泣かなないっていう。誰も泣かないんだけど、ちゃんとしたドラマになってるんだっていうところは挑戦したところだけどね。」
藤原「だからさ、人が可哀相すぎてみんなが泣くとかさ。最近泣ける映画つって映画館行く人の神経がよく解らないんだよね。行ったら泣いちゃったってんならいいんだけど、泣くために行くのって何?って。 俺あの価値観が解らないんだよね。泣く準備の心持ちってどうなんだろって思っちゃう。これダメなのかな? 」

藤原「涙ってさ、堪えるから美しいんでしょ? きっと。でも堪えても泣くからその映画に感動してく…。訳でしょ?」

原「百日紅に関しては登場人物が泣いてるって場面がほとんどないんですよね。原作もね。それなのに原作も感動したし、それって物語としての格が高い作品だなと思ったんですよね。」

原「涙なしで、観た人に喪失感を受け止めてもらって、映像作品にした方が絶対いいものになるって確信があったんで、あえて映画でも涙はなし、って決めましたけどね。」

原「初めてかも知れないですね。映画…長編で登場人物が泣かないって作品は、しんちゃんでも何かしら…涙流して、ってのはあったと思うんで。初めてとは言わないまでも久しぶりかも知れないですね。」


第103回アニメスタイルイベント「原恵一監督、藤原啓治さんとお酒を飲む会」
2015.09.20 ニコニコ生放送 アニメスタイルチャンネルより

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ど頭から実に新鮮。北斎の娘に焦点当てた映画っていうと、広義の時代劇かなと思ってたら、まるで違うんですね。
両国橋から眺める江戸の風景の開放感ですか。従来の時代劇で描写される江戸って兎にも角にもせせこましいじゃないですか。路地とか。それはそれで真実かも知れないんですけど。でも当時高いビルなんかは当然無いわけで。
公開直後、関東平野の中にある江戸を実感した、なんて鑑賞感想ツイートを見ましたけど。あの高く広い空、あのルックだけで一種カタルシスがあったし、個人的時代劇への食わず嫌い感が払拭されたし、良かったです。その何気なくも、広く高い空、その突き抜け感がお栄の生き様に通底すると思いますし。

2015.05.14 TOHO日本橋
田中田中

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