ベティー

ブリッジ・オブ・スパイのベティーのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
4.4
いい仕事がしたくなる、今年一本目の映画。これはよいチョイスでした。冷戦時、1950年代に米ソが互いに捉えられたスパイを交換するという交渉役を任されたエリート弁護士が主人公。
ストーリー自体は結構地味で、はっきりいって、キャッチコピーにあるような戦争勃発の危機を食い止めるといったほどのネタではないです。要するに米ソ双方のスパイが捉えられてしまい、お互い情報漏洩のリスクがあるので人質交換しようという話。
なんというか、プロの仕事という感じがする映画でした。主要キャストの人物像の作り方とか、印象的なセリフを繰り返すことですごく短い時間で個性的で魅力的に仕上げるようなところとか、素人目にもすごいなと思うところが多々ありました。
映像的にも良いシーンがたくさんありました。飛行機の墜落シーンがとてつもなく迫力あり、ここは映画館で観るとすごいです。それと、ソ連の裁判所に一人立たされる外国人兵士のシーン、すごく絶望感がでててぞくっとしました。東ドイツの荒廃感もすごく怖くてよかったです。冷戦時の特殊な張り詰めた雰囲気が不気味で楽しめた。
しかしこの映画の1番の見所は、スパイとしてアメリカに捉えられた男、アベルと主人公との関係性です。まったく違う人生を歩んできた男が出会い、互いに好悪の感情も不明なまま裁判が進んでいくわけですが、二人ともあんまり喋らないし、たいして印象的な交流シーンもないんですが、お互いのとる選択や行動からその人となり、信念を垣間見ることでだんだんと相手に対する敬意が生まれ、それが信頼関係が築かれていく。時間とともに次第に友情に似たものにまで変わっていく過程が映画の尺全体を通してとてもうまく描かれていました。
見知らぬ人同士が出会い、好意を抱く、信頼しあうというのはこうゆうことなのかな。人が人を評価する唯一のポイントは、そのひとのとる行動であって、一貫した行動を支えられるのは、一貫した信念があるからこそなんだろうな、と二人の人生の一部を見てそんなことを思いました。
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