ベンジャミンミン

ブリッジ・オブ・スパイのベンジャミンミンのネタバレレビュー・内容・結末

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

泣いた。この映画も『シンドラーのリスト』と同様に、自分の信念の下、正しいことのためにひたすら闘い抜く不屈の人が描かれている(シンドラーのリストはその点で史実と違うとの非難もあったが、個人的には別に良いじゃないかと思う)。
前半の裁判の方が後半よりも面白かったという意見がチラホラあって、それもわかるけど、それは意図的なものだと思う。これは決して表舞台には出なかった人の地味な闘いを描いているのだ。家族には魚釣りに出かけると言っておきながら、地味で過酷な闘いの中で、不屈の精神をもち正義を貫こうとする人たちがいたのだ。そしてまさにそういう人たちの努力によって核戦争は回避され、冷戦は終結したのではないのか。誰にも知られずに、帰ってすぐベッドの上で眠りこけてしまうような人たちの手によってだ。シンドラーのリストもそうであったが、この映画も偉大な人物を描いているが伝えたいことはその偉業を讃えることに止まっていないのだ。そういった信念を私たち一人ひとりが持つことで、世界は確かに良き方向へ前進するのだというのである。
また、捕虜の人との友情が胸を熱くする。米ソの対立を超え、互いにその気高さに敬意を払うその関係は、国の差がいかにちっぽけなものかが感じられる。両者の別れのプレゼント、絵とスパイ交換。あの絵に描かれたトム・ハンクスの表情が正にstanding manって感じで、泣いた。
蛇足かもしれないが、映画としての完成度もさすがに高い。ほとんど派手なことが起きない地味な映画なのに、退屈しない締まった映画になっているのはすごい(なんでなんだろう?)。伏線の張り方と回収も本当に流石としか言いようがないくらい手堅く完璧にこなしてみせる。