ねこ

スリーピング・ボイス 沈黙の叫びのねこのレビュー・感想・評価

3.7
可哀想な女性たち
何の罪もないのに無惨に殺されていく

本作を観ればそういう感想を持つが、戦と名のつくものにおいては「女性」の箇所に別の名詞を入れても充分に成立するのだろうと思う
どちらが政権を掌握しようと、監視、密告、粛清等々、互いにしてきたことは似たようなものだろうから

ただ、そこに宗教が絡むとどうしても違和感は大きくなる
聖職者やシスターたちが暴言を吐いたり暴力を振るったりする様はおぞましいし、激しい憤りを感じずにはいられない
軍人が行うそれとは違うレベルの嫌悪が生じてしまうのだ

宗教とはそもそもどんな存在なのか
たとえ命がかかっていたとしても、敵味方を超えて人としての正しさを説く存在であってほしかったと思うのは、無理なことだろうか

結局、国は荒廃し、国民も疲弊しただけの数年間
最後に妹の年齢を知り愕然とした
最も美しい時間を涙と共に待ち続けることにのみ費やしたとは
何の主義主張も持たなかった彼女が、成り行きで染まらずにはいられなかったことが本当に気の毒だ

個人がどんな思想を持とうと勝手だが、その関係者であったために迫害を受けるなど許されない

信念を貫いて生きること
時に愚かで時に尊く
その是非を問うことは、やはり容易ではないと思うのだった
ねこ

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