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花とアリス殺人事件のponyoのレビュー・感想・評価

花とアリス殺人事件(2015年製作の映画)
5.0
アニメーションの技術に関して、ロトスコープを用いることにより、Wikipediaに記載されていたその考案者であるマックス・フライシャーの言葉を借りると、「実写をなぞることでできあがる動きの奇妙さ(単純化を行なうアニメーションにそぐわないリアリティの創出)」と呼べばいいのか感覚を味わった。しかし3DCGアニメーションの単調さというか、最近はウマ娘など優れた技術が多数存在するが、どうにものっぺりとプレーンで、その原因として、むしろ手書きは必ずどこかでキャラクターの輪郭に歪みが生じるはずである。そのくにゃりと曲がった線をアニメーターは上手に活かすべきであり、3DCGと戦える数少ない武器である。他にもその不連続性など、手書きのアニメーションは「完全でない」という、なんとも生き物らしい特徴を多数備えていて、それにこだわりのある人間がいるのも納得である。特に最初のバレエなど、単純な線と色で軽やかに動くアニメーションは楽しかった。3DCGにおいても、例えば駐車場でのバレエのシーンなど足の動きは、当然なのだけれどとても滑らかであった。バレエに力を入れたくて採用したのか、全編手書きで挑戦して欲しかったのはどうもある。背景の、あまりカメラに詳しくないのでよく知らないけれど、あの四辺の鮮やか色の光は、背景のボーッとした絵やシンプルのデザインのキャラデザと非常に相性が良かったと思う。老紳士とアリサのブランコのシーンは、どうにも生きることの素晴らしさのような、なんと言えばわからないがあの感慨はとても良かった。岩井俊二の作品に出てくる夫婦仲はいつも上手くいかず、母親はいつも若いくて父親は少し勝手な愛情を抱いていると思った。教師の声優に黒木華を採用したのは、「リップヴァンウィンクルの花嫁」を見た後だとどうもしっくり来た。黒木華の人柄の幅を上手に活用しているかなと思った。
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