Tutu

北の国から'84夏のTutuのレビュー・感想・評価

北の国から'84夏(1984年製作の映画)
4.2
東京から富良野の中畑家に遊びに来ていたクソ生意気なITボーイ・努がパソコンを自在に扱う様に、東京、そして時代と隔絶された自分を意識する純。その焦りと努に父を侮辱された憤りから、純は努のパソコン雑誌をくすねようとするが、寸でのところで失敗する。それを見ていた正吉が代わりに雑誌を持ち出し純に渡そうとするが、純は「そんな気はなかった」と突っぱねる。自分の保身だけを考える純に正吉が「やっぱりお前は汚い奴だ」と言い捨てると、その言葉にはっとした純は、彼と正吉だけが知る、丸太小屋を焼いた火事の真相に思いを巡らすのだった。

子供らしい嘘と保身に身を砕く純の苦悩にフォーカスしたドラマスペシャル第2弾。
「'83冬」から続き共に生活する正吉と純の関係も、ただの「気の置けない友人」とは言えないものになっていく。家を燃やしてみたりITボーイを苛めてみたりと、子供の無邪気さにはちょっと不釣り合いな大事件を二人に起こさせながら、それぞれの人となりと関係性とを掘り下げていく。親同士もそうだが、この二人も結構な因縁で結ばれた者同士のようだ。

まさに「天才子役」としか言いようがない吉岡秀隆の演技が見事(同じく子役出身の坂上忍が「凄いと思う俳優は?」の問いに吉岡の名前をあげていたような)。ラーメン屋での告白のシーンなんて、きっと並の子役ならわざとらしさが先に立ってしまいそうなものなのに、自らの嘘に苦しむ子供の心情がすっとこちらに入ってくる演技をしてくれるので、直後に五郎が吐く名台詞「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」を違和感なく受け入れることができるのだと思う。こういうのって、鍛錬で身につくもんじゃないんだろうなあ。

と、一しきり語ってみたけど、あの名シーンの本当のMVPはやっぱりラーメン屋のババアだよね。あのムカつく態度からタバコの煙プカーから、照明を親子3人へのスポットだけにする等々、きめ細やかなサポートが本当に光ってたね。マジでぶん殴りたいわあのババア。
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