ニジム

いしゃ先生のニジムのレビュー・感想・評価

いしゃ先生(2015年製作の映画)
3.4
戦前から戦後にかけて、無医村である故郷に戻り僻地医療に生涯を捧げた女性の実話を元にしたお話。

山形の雪深い寒村から東京女子医大の前進東京女子医学専門学校に進み、そのまま東京で医師になるはずだった志田周子は、村長の父の懇願で半ば強引に診療所を任されることになる。東京には将来を約束した人もいたが、3年の期限がずるずると延び、もう東京に戻れないと静かに諦める様子が悲しい。

さらに、やっとやってきた医者だというのにそ受け入れられず、民間医療や信仰に頼る頑迷な村人たちにより孤独に晒されるのも悲しい。せっかく診療しようとしても家族に拒否され無為に死なせてしまうことも。診療費を払う金も持たないこともあり、医療を受けてもらうだけでも大変な苦労をすることになる。

昔の人は、よく我慢したなあと思う。今ならさっさと逃げ出しているか、そもそも親の頼みだろうと自分の人生を優先させてしまうことだろう。そういう、個人の選択が尊重されない時代の話でもあるんだよなあと。

シンプルで、変な脚色なく、品よく作り上げた良作だと思います。彼女を思う人々の心を感じることができました。

アララギ派の詩人でもあったようなので、作品のほうも読んでみようと思います。
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