Yuri

エイプリルフールズのYuriのレビュー・感想・評価

エイプリルフールズ(2015年製作の映画)
4.1
出てくる人みんなが嘘を付いているのだけれど、嘘が必ずしも悪いものでは無い。この映画に出てくる嘘は優しさに溢れた嘘で泣かされた。

42年ぶりの生還の偽のニュース。普通に考えれば世間からは批判を浴びる対象だが、思わぬ所で希望を生むことになる。その嘘のニュースは純粋に信じた気持ちをある意味裏切っているはずなのに、むしろ人を勇気づける。予想外の産物。情報番組は嘘がない方が言いけれど。

その嘘から生じた希望で純粋な思いで、嘘をつき続けた牧野を追い詰める新田。牧野は嘘だらけだったけれど、嘘の中には新田を勇気づけるものもあった。
そして本当に新田が出産する時に、レストランにいたみんなが嘘をつくことで新田を支えるシーンは印象的。嘘だってこんなに力に変わるのかと驚いた。
オーナーシェフのように、日頃嘘があると肝心な時に信じてもらえなくなるので、嘘の使い方は大切だと思った。

ロイヤル夫妻の嘘は、あまりの優しさに感動した。嘘だとわかっていながら、それに気付かないふりをして丁寧な振る舞いをする2人に心が洗われる想い。何でも正直に言えば良いものではなく、時に嘘が優しさとなることがあるのを最も感じさせられたシーン。嘘は時に美しい。

誘拐犯の件も、ずっと父親だということを伏せたままでいたけれど、本当の父親の熱い優しさに響くものがあった。親子の愛がまた素敵なものだった。

大学生2人は、それは本当に幸せにしたのか不安ではあるけれど、少なくとも一時の幸せはあるし、改めて相手のことを想いやる良いきっかけだったのかもしれない。

新田は特に純粋に嘘を信じて、その嘘に終始支えられた。そんな新田もまっすぐな思いから嘘をついた。嘘が全て悪いのではなく、そこに優しさが秘められた嘘は人を救うのだと学ばされた映画だった。

全ての場面が他の場面と繋がっていたのも面白かったし、戸田恵梨香の演技には魅了された。演技感がなくて嘘がない感じがしたところがすごいと思った。映画だってある意味嘘なのに、人を色んな気持ちにさせてくれる。

嘘も上手く使えば、とても素敵なものだな。
Yuri

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