米倉ケイ

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカの米倉ケイのレビュー・感想・評価

4.3
さらば初代アベンジャーズ。
さらばMCUフェーズ2。

あの傑作「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」につづくキャプテン・アメリカシリーズ第三弾。
世間ではアベンジャーズの続編として認知されていそうですし話の繋がりからいっても実質「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の後継作ではありますが、スティーブ・ロジャースの生き方に現代のヒーローたちが感化されてゆくという意味で、やはり「キャプテン」たるものの存在が絶対なのでしょう。

超堅実。超真摯。
これがマーベル・シネマティック・ユニバースのヒーロー映画への挑戦。
これでもまだまだ一区切りした段階というところが恐ろしい。
これまでのヒーローたちの圧倒的な質量を昇華させた「アベンジャーズ」のお祭り騒ぎから一変、個人の感情では処理しきれないような大きな問題を共有し、"家族"となっていくアベンジャーズの姿。自然と共感できてしまう。

「誰がアベンジャーズを監視するのか?」
世間の批判や政治的観念が彼らを絡め取ろうとするとき、これまで戦場を幾度も共にしてきたトニーとスティーブの間に亀裂が生じる。
ウィンターソルジャーこと、バッキーという不安定な存在を皮切りに。
予告編でもあったトニーvsスティーブ&バッキーの対決は本作最高の盛り上がりと見応えでした。
「ウォッチメン」で有名なフレーズが頭を過ぎりましたが、
もじって「誰がアベンジャーズにアベンジ(復讐)するのか?」とか言ってくれたら面白かったな(笑)

個人的な感慨を言うと、シリーズ最高傑作とはならなかったです。
しかしもはや傑作は求めていません。
映画単体として「わかりやすく面白い」「わかりにくくて面白くない」の枠をもうはみ出してしまっていて、
そういう視点ではもう観られない。
そんなの寂しくて仕方ないよ。
だって私は「キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー」に憧れていたし、いまも憧れているんだからさ。

スティーブの喪失感、
トニーの業、
何も拭われないまま「彼らの世界」は続いてしまう。
そんなの悲しすぎる。
それでも!!
世界を生き抜くのはスティーブとトニーだけではなく、新たな世代あってこそと誰もおいてけぼりにしないところに限りない人間愛を感じます。

もうあのラストを観てしまったらね。
早く「ブラックパンサー」と「スパイダーマン」が観たくなるわけですよ。

これはもうヒーローたちの見せ場を楽しむためのエンタメではなく、彼らが生きた世界を政治などを織り交ぜて土台を踏み固めるためのサスペンスに近い。

正直ここまでのMCUを追うのはかなり疲れる。
そんな作品を未来を見据え根気よく作り続け、人ひとりの一生に値する密度の完成度までこぎつけ、日本でも認知度を高めたディズニーの戦略には感服する。
マーベル・シネマティック・ユニバース版大河ドラマはまだまだ道半ば。


DCとどうしても比べてしまうとは思いますが、私はどちらの世界もすごく楽しいです。
自ら考え、読み解き、感じたことを素直に表現していき、
そうやっていろんな映画を楽しめるようになれたらそんな素晴らしいことはない。


コメント欄はネタバレです。泣いた。
米倉ケイ

米倉ケイ