COZY922

日本のいちばん長い日のCOZY922のレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
4.0
映画としての出来の良し悪しよりも、終戦の舞台裏にあった出来事や、様々な思惑や抗いを経て戦争を終わらせるに至ったという史実に触れることができたことが、何よりもまず良かった。お恥ずかしながら宮城事件のことは事件の存在を知っている程度で具体的な知識を持っていなかったので、鬼気迫る様相で文字通り体を張って徹底抗戦を訴え力づくの手段に打って出る畑中少佐ら陸軍の若手将校達の姿に愕然とした。落胆、怒り、困惑、虚しさ、いくつもの感情が沸き上がり交錯した。

あの時、もしも違う判断が下っていたら、もしクーデターが成功していたら今の日本は無かっただろうし、自分も存在しなかったかもしれない。ひとつ違えば違う今につながっていたのだと思うと、判断の持つ重みを感じずにはいられなかった。

何が勝ちで何が負けなのか?狭義の勝負に勝って多くの人命や未来を失うことは取り返しのつかない損失であり、”負け”に他ならない。負けを認めてこそ守れるものや維持できるものがあるはず。ただ、そういうふうに考えられるのも、戦争を知らない時代に生まれて育ち、戦後に確立された教育を受けたからこそなんだろう。『お国のために死ねるなら本望、最後まで徹底的に戦うことが美徳』と信じて疑わない畑中少佐達を、現代に生きる自分が安易に批判したり責めたりすることはできない。ただ、教育や環境が思想に及ぼす影響の大きさをあらためて思い知らされた。各国の、戦争や史実に対する捉え方・考え方の違いや、全体主義的な国の人々の思想の画一化も幼少時からの教育によるところが大きいはず。

自分ができること、できる範囲はわずかではあっても、史実をきちんと知り伝えていこうと今更ながら思いました。

*役者が皆、力演していました。中でも特に、本木雅弘、山崎努が素晴らしかったです。
COZY922

COZY922