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怒りのhrnのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
3.5
八王子で起きた夫婦殺人事件の犯人を捜すべくメディアによる公開捜査が行われた。
同じ頃、千葉・東京・沖縄に犯人と思しき素性の知れない男が現れていたーーーーー。


フィルマークスでも高評価な今作、かなり期待して観ました。表題の「怒り」という言葉とベースになる「夫婦殺人事件」でドロドロのヘビーサスペンスを想像していた私は拍子抜けしました。

今作は「怒り」とはかけ離れた「愛・信頼」が隠れたテーマになっています。突然現れた素性の知れない男の何を知っていて愛するのか、信頼するのか。そしてどこまで愛して、信頼できるのか。
三つのストーリーを通して投げ掛けてくる深い問いは、見終えた後もじわじわと胸に響いてきました。


どの舞台も決して交わる事はありませんがシーンが入れ替わり立ち替わり変わっても不思議な事に振り回されている感じが全くしませんでした。寧ろ、その切り替わりが心地良い気さえしてきます。絶妙なカット割りが素晴らしかったです。

俳優陣は日本を代表すると言っても過言では無い豪華なキャスティング。皆さん個々で主役を張れるレベルの人達が揃っているので三つの短編ストーリーに収めるのは勿体無い気がしてしまいます。

演技としては文句無しの満点です。不安要素だった広瀬すずちゃんも、最初こそ…な印象でしたが終盤にかけては迫真の演技でアイドル女優のレッテルを剥がせたのではないでしょうか。この役を演じた事でオファーの幅が確実に広がったように思います。

今作は私にとってとても不思議な作品でした。というのも、正直見終えた直後の感想は「これの何が面白いの?」とみなさんの高評価を疑ってしまう程でした。
ですが、作品を思い出しながらレビューを書いていると何とも言えない感情がじわじわと湧き出てくるのです。2時間前に観終えたばかりなのに、観返したいと思うのは初めての体験です。
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