ササキ

怒りのササキのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
3.1
ネタバレあり。

自己と他者に向ける信と怒りについての映画。愛する人を守りきれるはずだと信じた者、信じるべき人を最期まで信じきりたかった者、疑うことを知らず味方となってくれた人を信じた者、それぞれが自己や他者を信じ、自己や他者に裏切られ、怒りを生んでいく。その怒りの矛先は裏切られた対象に戻っていくのが通常であるが、米兵からのレイプにあった少女(広瀬すず)が沖縄の海に叫びの声を上げるというラストは良かったと思う。

ただ、殺人犯が壁に怒りの文字を刻み込むというのはよく分からないし、殺人犯の森山未来が泣いてまで少年に嘘をつく理由が分からない。殺人犯は異常なやつだからと無理な人格設定にしていいのか。森山未来が嘘をつく場面を繰り返し見たが、そこに悪意は感じられず、整形とか黒子の位置とか狡いミスリードの仕掛けと同じく、この嘘も脚本上の都合によるものとしか思えなかった。脚本のための脚本である映画は自分には響かない。

あと宮崎あおいと広瀬すず、松山ケンイチと少年はずっと同一人物だと思って見てた。

演技では、中心の役者達よりも出番の少なかった高畑充希が見せる現代的な表情?(静止した顔が時々相手の話に反応するように瞼が微細に動く、笑みを浮かべる時に瞳が湛えている悲しさ)に凄みを感じた。
ササキ

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