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シン・ゴジラのspacegomiのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
2.0
安っぽい人間ドラマを徹底的に排したのは素晴らしい。現実(311以降の日本社会)vs虚構(未知の巨大生物の襲来という「災害」)の思考実験。とことんディテールに拘ったオタク的リアリズムは、個人的には非常に苦手なのでかなり引いてしまったがハマる人がたくさんいるのも頷ける申し分ない出来。
ビューロクラシー、文書主義を皮肉るような早口台詞、情報の氾濫にはノレず。滑稽さを演出するという意図であっても見ていてかなりキツい。仮にああいうのが理知的でカッコいい大人として描こうとしているのであれば本当にくだらない。
何も決定できない民主主義の欠陥を露わにするのはいいが、「意思決定のできるリーダー」によるヤシオリ作戦で見られるニッポン賛歌がとても怖い。完全にニッポンvsゴジラという図で、有事の共同体肯定を強いられる。官民賛歌(といいつつ民はほとんど出てこない、おそらく意図的)という形を変えただけのナショナリズム、全体主義の匂いに強い拒絶感、嫌悪感を覚える。民を意図的に排した官の物語から高揚感が喚起されることへの恐怖からまったくノレなかった。それも架空の国ではなく311以降の日本、東京を舞台にした有事シミュレートにおいて。
あと、アニメ的な造形の石原さとみに日本人からみた米国像を代表させているのだとしたらかなりスベってる。たいして笑えるわけでもないしただただ寒い。
ゴジラの造形、特に第一形態は最高。もっと動くゴジラを見たかったがな。
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