サトモリサトル

恋人たちのサトモリサトルのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
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橋口亮輔監督作は初見。
以前、劇場予告で見てから気にはなっていたんだけれど内容がかなり重そうだったので中々足を運べずにいた。
2015年度のキネマ旬報ベストテンの第1位に選出されたこともあり、これはやはり劇場で見なくてはと思い渋谷のユーロスペースにて鑑賞。

パンフレットの角田光代さんの寄稿文でも述べられているように、メイン3人の登場人物に対してかなりイライラした気持ちで見ていた。
その中でも特に瞳子のへらへらした感じが1番イラッとしたんだけど、最後に希望が見えて1番良かったねと思えたのも瞳子だった。

メイン以外にも、瞳子のパート先の弁当屋の奥さんやアツシの殺された妻の姉などスピンオフとしてこの人達にスポットを当てても映画が出来そうな、そんな印象的な登場人物が沢山出てきた。
そして、彼らに対して一々「ああ、こういう人いるな」とか「これは自分だ」とか思いながら見ていた。

もっとドキュメンタリー的な感じかと思っていたけど、しっかり劇映画で、かといってそこにあまり作為的なものは感じられなかった。それぞれの登場人物が役とかじゃなく、そこに存在しているという感じ。

終盤、アツシが一人部屋で亡くなった妻に語りかける長台詞のシーンはアツシと一緒に泣いた。
通り魔に妻を殺されて、犯人を殺してやるって思うぐらいに憎む気持ちは想像しても追いつかないけれど、アツシの感情の動きにこちらも揺り動かされて気が付けば顔がぐしゃぐしゃになるほど涙が流れていた。

だから、ラストシーンの描写は本当に救われた気持ちになった。
少なくとも一歩進めたんだ。
この先、また何度も絶望することがあるかもしれない。
ずっと安定の人生なんて、誰もがきっと望めないことなんだと思う。
けれども、やっぱり人は生きていくんだ。
自分の気持ちに自分自身で折り合いをつけながら。