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愛の小さな歴史のmakotoyoshidaのレビュー・感想・評価

愛の小さな歴史(2014年製作の映画)
3.9
あんまり感想になってないけど、思いつくままに。

この作品、題名は上品だが内容は中川監督作品の中でPlastic Love Storyと並んで激しい。
作中で人が死んでしまうし、登場人物たちの感情の起伏も激しい。

明らかに近作の「息をひそめて」や「静かな雨」と比べると洗練されてないし、完成度も高くない。
ぎこちなかったり、痛かったり、物語の最初と最後に置かれたシーンの意味がイマイチよくわからなかったり。
たぶん中川監督の作品でいちばんダサくてカッコ悪い作品かもしれない。
でも、そこがいい。

本作ははじめて有名な俳優さんを起用して、それまでの作品と比べればお金もかかっているし、きっと映画祭を狙うぞという気合いの入った作品でもあっただろう。
作品を見ながら、そういう若い監督の闘う姿、野心とか試行錯誤とか苦労とかいろいろ見えてくる気がするし、ストーリーにも中川監督の激しい一面が生々しく出ていると思った。

この作品で一番印象に残ったのは、チンピラ役の沖渡さんの演技。
滑稽に見えることもあるが、不器用な生き方しかできないけど本当は妹思いで優しい男の気持ちが伝わってきて、僕は感動した。

中村映里子さんも本当に素晴らしい。激しい感情表現も気持ちが伝わってきて本当に役を生きてる感じ。それから、演奏会のピアノを聴いている顔、家の外で憧れのピアニストを待っている顔、ピアニストの家のベルを押すときの顔、その後のがっかりした顔など、美しい上に表情がとても繊細かつ豊かでうっとりした。最後の浴衣姿も尊くて最高。

ということで、デートに向くかは微妙だけど、いろいろ愛すべき作品になっていると思う(何だか偉そうな物言いですみません)。デート向きのベタにロマンティックな作品もぜひ作ってください。
中川さんはたくさん作品を出してくれるから嬉しい(TOKYO NEW CINEMAの功績ほんとうに大きいと思う。感謝。)。
一つの作品つくるのに何年もかかる巨匠とかにならないでほしいな。
これからも多作であって欲しいと願っています。
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