にじのすけ

仁義なき戦いのにじのすけのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.0
ここに出てくるやくざたちは、最初は仁義でつながったはずが、徐々に堕落していって、金や地位の亡者となり、結局はだましだまされ合いを繰り返し、弱かったり仁義に厚かったりする者から次々に死んでいく。文字通り”仁義なき”リアリズムの極道世界を描いた、70年代の邦画を代表する作品である。いわゆる「広島戦争」という実際の抗争をベースにしており、当初からシリーズ化する可能性があったため(実際そうなったが)、第1作である本作は一つの作品ととしては語り残した感が残り、その点、やや欲求不満を感じる。
とはいえそれは贅沢な言い草。全編にわたって名台詞の応酬が続き、息もつかせぬ展開や、出てはすぐ死ぬやくざの個性も短い尺の中で可能な限り描こうとする演出は、深作監督ならでは。敬服するほかない。他の作品にもいえるが、深作演出には卓越した大衆的娯楽性と、映画でしかできないことを役者の肉体を使って表現してやろうという狂気じみた凄みを感じる。そのためか、同じく暴力描写に定評のある北野作品と違って、あまり芸術性の観点で語られることはないようだが、観客の身体の底に、ずしん!と衝撃のくる映画は深作監督の独壇場だった。本作はそんな深作美学が炸裂する魁となった、という意味でも押さえておきたい名品。
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