ボナペティ男

キング・オブ・ヴァジュラ 金剛王のボナペティ男のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

 僕は恥ずかしい。『カンフーハッスル』『イップマン 序章』『孫文の義士団』『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』『超級護衛 スーパー・ボディガード』などなどと、数多に倒され続けてきたシン・ユーの主演作。観てなかったことが恥ずかしい。

◯1930年代、中国国内で盛勢を極めた日本暗殺カルト集団「ハーデス」。第二次世界大戦中、日本軍部との衝突で、指導者の天野川雄(倉田保昭)は逮捕。その他構成員の追放によりハーデスは解散となってしまう。しかし、中国侵略策が頓挫すると、軍はハーデスの利用を決定する。
 城ノ宮(池内博之)の命を受けた天野は、倉生大介〈K-28〉(ユ・スン=ジュン)の元を訪れ、ハーデス神社の再構とK-29(シン・ユー)の始末を倉重に託す。
 とんでもジャパニーズ・組織を討ち倒す勧善懲悪アクション。

 序盤、倉生が木人ならぬ鉄人樁で修練を積む辺りからとんでもカンフーの匂いがプンプンする。ユ・スン=ジュンの肉体がバキバキですごい。
 池内博之の日本語の滑舌がかなり危うい。イップマン、レイルロードタイガーと悪役ジャパニーズに引っ張り凧なのね。

 ハーデスは最強人間兵器となる勇士の養成所としてハーデス神社を建立し、子供の頃から訓練を積んできた者同士で競わせ、さらには外部から連れてきた軍人から何からとも戦わせ……。暴力の蠱毒。そして、ハーデスが目指すは世界平和と、輝ける人間性の獲得。なんて優しい啓発団体。捕虜にすらビール工場の見学レベルで案内してくれる。なんて嬉しい心遣い。「ハーデス精神が弱いアジアを強者に変え、白人統治から救う」イカれた設定本当に好き。
 南少林寺の師父が突然ガックリ事切れるの笑ってしまった。

 南少林寺に身を寄せながら17秒の必殺技、金剛の境地を目指す脱走ハーデス勇士、K-29。寺の小僧がハーデスに拐われ、ハーデス神社に乗り込む。過去に訓練中に実兄を殺めてしまったことでハーデスへの恨みもある様子。
 
 アクションがめちゃくちゃよかった。
 シン・ユーvsジャン・バオ・チェン。悪逆処刑人の鉄幕雷(ジャン・バオ・チェン)を圧倒するアクション・シーン。シン・ユーのダイナミックで一撃一撃に力のこもった攻撃が格好いい。ちょっと慈悲をかけてしまって無関係の一人が鉄幕雷に殺されるの笑える。訳わかんない。「罪を償う気がないのか」とシン・ユーの日本語が囁きと早口で聞き取り難い。『ローグアサシン』のジェイソン・ステイサムより上手。
 次戦、シン・ユーvsナム・ヒョンジュン。旧友を殺され、瘋猿への復讐に燃えるK-29。暗がりの門前でのタイマン。ナム・ヒョンジュンがとんでもない身体能力で所狭しと動き回る。コンテンポラリー・ダンスってすごいんだなぁ。そしてシン・ユーもとんでもない身体能力で追いかけ回す。背骨を肘打ちでボコボコにするのめっちゃ面白い。水中で水圧ものともせずに膝蹴りするのやばい。

 天野から倉生君への手紙の文面が可愛い。印刷したかのような達筆。ゴシック体。

 K-29はK-23らと子供を逃す画策を済ませてから、倉生戦へ。子供らを助けるための殺陣ありの乱戦がなかなか面白くて見入る。子供らを身を挺して守り、死ぬ枝子。
 シン・ユーvsユ・スン=ジュン。鉄人樁のイメトレが二人とも面白い。馬と牛みたいな筋肉。カンフーと喧嘩殺法な構図もいい。そしてなんだか手助けしてくれてた人が実兄で生きていたのを知り、覚醒するK-29。情が金剛の怒りを誘発するのだから、超強い。

 勿論、K-29には正義の心があるし、対岸にいるようだけれど倉生にも信念がある。武器を用いずに、精神的に強くあろうとするハーデスに傾向してしまうのも仕方がないのかもしれない。

 ハーデスの頭目代行を倒し、福建土楼な神社は開放。残された構成員もいずれ遠征軍が捕まえる。めでたし。
 僕の知らない第二次世界大戦がそこにあった。やっぱり映画を観るたびに大日本帝国軍は卑劣な輩ばかりだったのかと再認識できる。どんな邦画より信用に値する。
 倉田保昭、池内博之の出番が少なくてちょっぴり寂しい。

 ハーデス! ハーデス!!
ボナペティ男

ボナペティ男