イチロヲ

美女濡れ酒場のイチロヲのレビュー・感想・評価

美女濡れ酒場(2002年製作の映画)
4.0
自殺未遂を引き起こした青年(竹本泰志)が、小さな店で雇われバーテンダーとなり、客人の悲喜交交を目の当たりにしていく。2000年代のポストシラケが投影されている、オーピー配給のピンク映画。樫原辰郎が監督を手掛けた唯一のピンクとなる。

就職氷河期世代と呼ばれる人たちが、リアルタイムでジタバタしていた頃の作品。すっかりダンディな初老の姿となった野上正義が、屋上から飛び降りた青年をバーに引き入れて、ナンタラカンタラという展開。

バーに訪れる人物は、無一文の女性歌手(山咲小春)、就職難に喘いでいるダメ男(大出勉)とその若妻(若宮弥咲)など。ラストの着地点が容易に読めてしまうが、虚実不明瞭なフワフワした雰囲気作りに秀でており、その世界観を楽しむことができる。

先述した氷河期云々との関連性は、筆者の勝手な思い込みであり、製作者の意図とは外れているかも知れない。しかし、個人的な境遇と映画の作風が、意図しないところで合致したときのガツーンとくる感じに、魂が揺さぶられる。これもまた映画の妙。
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