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はじまりへの旅のmayaのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
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現代の資本主義的な社会と対立し、人里離れて暮らす父親とその父親から教育を受ける子供達。温かな気持ちで鑑賞していたけど、主義・思想にコントロール(…とまでは言わないけど)される怖さや、シニカルな描写はなかなかパンチが効いてた。父親がJesse Jackson '88のTシャツ着てたり、長男が「僕はトロツキストではなくマオイスト(毛沢東主義)だ」とか発言しちゃったり、そういう刺激的な部分もあり。リスペクトしていた父親のやり方に次第に懐疑的になり、反抗的な態度をとった次男レリアンが読んでたのが「カラマーゾフの兄弟」だったのも人間の自由を考えるという意味で、設定の上での演出の一つだったのかな…?とも少し思ってしまった。生きる環境によって「普通」とは何か…という考え方が大きく変わるし、その価値観のズレによる衝突って色々な場面で起こりうる事だし、そういった問題に対してこの親子の姿を通じて切り込んでいった作品なのかな、と感じました。

日本で生活している以上遺体の処理方法に選択権がほぼないに等しいので感覚としてわかりづらい部分もあるけど、故人の意向を汲んで土葬ではなく火葬するために奔走する家族の姿が良かった。そしてその火葬シーンが凄く印象的で、自分の人生を預けた人やその人との子によって願いが叶えられた瞬間として見ると感慨深いものが…。ガンズのファンではないけど、Sweet Child O' Mineを愛した母に捧げる父子…これは名シーンだな〜〜。他にも不意打ちのシガー・ロスやエンドロールでのボブ・ディランのカバー等、音楽も素敵だった。個人的には次男が父に向かって「なんでクリスマスは祝わないでチョムスキーの誕生日を祝うんだ!」みたいな事を言ったのに対してヴィゴが「人間より架空のエルフ(Christmas elfの事?)を祝うのか」みたいなニュアンスの事を返してたのがツボでした。台詞忘れたからだいぶ端折ってるけど、これは狙ってそう。
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