菫

山の音の菫のレビュー・感想・評価

山の音(1954年製作の映画)
4.5
原作は川端康成の同名小説。原作では、主人公・信吾の、老いに対する恐れや生の渇望が鮮やかに描かれているのに対し、映画では、舅と嫁の関係性に焦点が当てられている。
菊子(原節子)と修一(上原謙)夫婦の完全に冷え切った感がリアルだった。修一の不貞シーンが直接的に描かれないからこそ、余計に。
最も心に残ったのは、鼻血を出した菊子を、山村聰演じる信吾が介抱する場面だ。そこはかとなく漂う淫靡な影。肌を触れ合わせている訳ではないのに、妙なエロティシズムを感じさせる。
格調高い名作。
菫