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グレイテスト・ショーマンのぽぽのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
4.0
夢と希望に溢れた作品だった。
印象に登場するのが偽物と本物という2つのキーワードに思えた。偽物とは「本物ではない物、および、本物ではないという抽象概念のこと。」を指すとされています。一方の本物とは「にせ物や見かけばかりの物ではない、本当の物。」と定義されている。この2つは相反する概念であり、決して交錯することはありません。偽物は偽物であり、本物は本物なのです。これは揺るぎません。
しかし、何を持って偽物とするのか、また本物とするのかこの部分の定義は非常に難しいです。本作では美徳と格式を重んじる演劇芸術が本物、バーナムのショーが偽物として描かれます。そのためバーナムは、本物という考え方に囚われていきます。彼が囚われたのは、とりわけ上流階級、知識階級から見た形式上の本物です。自分が率いてきたショーが偽物であると、白旗を揚げ、ジェニーリンドの歌声こそが本物であると認識し、徹底的に成り上がろうとしました。
しかし、そこにバーナムにとっての本物なんて何一つなかったのです。彼にとっての本物は彼が偽物であると自嘲してみせたものの中にあったのです。偽物は本物になることは確かにできません。しかし、偽物は本物を生み出すことができます。
偽物が集ったバーナムのサーカスに生まれた家族のような絆は本物です。偽物のバーナムが妻や子供たちに与えた幸せも本物です。偽物のサーカス団を見た観客の幸福感も本物です。

自分が偽物であると分かると、何物でもないと分かると、社会的に妥当性を保証された本物を目指すようになります。そしてそこに辿りつく過程で、ふと疑問に思うのです。これが自分にとっての本物なのだろうかと。
偽物なのか本物なのかを決めているのは確かに社会なのかもしれません。しかし、それを最終的に決めるのは自分たち自身です。


自分が本物だと感じたものが本物です。だからそれを信じれば良いのです。誰かが決めた本物になるのではなく、自分が思う本物になる。これが大切なのだと映画「グレイテストショーマン」は教えてくれます。

内容に関して、皆の評価が低い中、そのミュージカルパートの圧倒的な力に見ている我々は惹きこまれ、甘美な感覚に酔いしれることとなります。ずっと見ていたい、あの音楽に浸っていたい。ここまで純粋に人を幸せにするためだけに作られた映画が他にあったでしょうか?

批評や評価じゃない、娯楽映画としての本質を突き詰めた映画。100の欠点を120の好きで埋め尽くす。それが「グレイテストショーマン」という映画の持つ不思議な魅力だと思いました。
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