花波

エール!の花波のレビュー・感想・評価

エール!(2014年製作の映画)
3.8

全力で走って、広げられた腕に飛び込んで、強く強く抱きしめ合ったあの瞬間、音が無くても、その表情でその仕草で、今までずっと精一杯愛を伝え合ってきたんだなって分かって、泣き噦ってしまった。もうなんか、口から出る言葉に頼りっぱなしで生きてる自分が恥ずかしく思えたや。本気で伝えようと努力もせず、伝わらないなんて思ってるの、恥ずかしいや。


耳が聞こえないことを個性って言うお父さん、いいなあ。この映画自体そのことを可哀想に描いていないからこんなにも素敵なんだろうな。そして何よりもラストの圧倒的な歌のシーンは、ずるすぎる。あのシーンこそ無音にしたくて無音で観たけれど、うん、やっぱり、表情で仕草でその身体全部で気持ちを伝えようと、届けようとするって、なんかすごく人間的で、シンプルで、とても尊い。


歌が上手いことだけがポーラの才能じゃないよなって、思う。その表現力も、素直に先生の話を受け入れられるところも、好きな人にまっすぐぶつかれるところも、家の手伝いを少しも煩わしいと思っていないところも、全部全部彼女の良さで、それらはすべてあの両親によって育まれていて、夢に繋がっていったんだよなって、思うんだ。笑顔で走り出せるのは背中を押してくれた家族がいるから。諦めないことも前向きに生きることも、全部全部教えてもらったから。

良い映画に出会えて幸せ。
花波

花波