アベ二ティKazumaAbe

14の夜のアベ二ティKazumaAbeのレビュー・感想・評価

14の夜(2016年製作の映画)
4.1
みっともない僕らの青春譚に新たな金字塔が…と言ってしまうとやや過大評価かもしれない。けど非常に好きだった一本。

舞台は1987年の田舎町。中学生のタカシは少し現実を憂いている。情けない父親のことが嫌いだし、日々絡んでくるヤンキーがうざったいし、隣に住む巨乳の幼馴染、半グレの気になるあの子には暴走族の彼氏がいる。そんなある日、彼は町に一軒だけあるビデオ屋でAV女優のサイン会があるという噂を耳にする。さらに「深夜0時を過ぎるとおっぱいを揉ませてもらえる」らしいと聞いて胸を躍らせるがそんな折、予期せぬ事態が発生して…

幼い憤りのままに家を飛び出した冴えない中学生が過ごす一夜。現実はそんなに甘くない。クソみたいな日常に別れを告げるべく走ったタカシが様々な体験を経て、自身を振り返った後にみせる泣き笑いが高of最。邦画史において重要な作品『百円の恋』の脚本家が初監督を務めた本作はあまりに露骨でバカっぽくて繊細。落ちているエロ本をドキドキしながら捲ってしまった少年時代、また、心底下らねぇと見下した相手との苦い想い出が懐かし~い「一部の鑑賞者」にとっては確実に”刺さる”一本になっている。

キャスティングの豊かさも印象的。大根仁『恋の渦』の後藤ユウミ、『サイタマノラッパー』シリーズの駒木根隆介はいずれもインディーズ映画でのキャリアが抜群な実力者。主人公の姉役の門脇麦、今回の薄幸具合も素晴らしいし、タカシがほのかに想いを寄せる巨乳の幼馴染・浅川梨奈の強烈なインパクトも忘れがたい(最初はキレイすぎるかなぁと思って観てたけど、危うい面構えとおっぱい、クリアな声がとても良かった)。

どんだけ危険を避けて通ろうが自分の居場所を探してみようが、やっぱりDQNはちょっと羨ましいし性欲には勝てない。それは情けないことではあるが、そんなのみんな分かっているんだ。少年期の悔しさが全面に滲んだであろう脚本、それを全力で体現した主人公の咆哮、虚勢、涙が本当に最高。足立紳監督と主演・犬飼直紀君の今後に超期待