たかくらかずき

スター・ウォーズ/最後のジェダイのたかくらかずきのレビュー・感想・評価

5.0
素晴らしい…3に並ぶ最高のスターウォーズだ。これは、"ファンによって閉ざされてしまったジャンルを開こうとしている"話であり、"フォースのオープンソース化"の話であり"今までの善悪や価値基準やヒエラルキーをリセットする"ための話だ。

特に素晴らしいのは戸惑うルークをよそに、ヨーダがジェダイの聖書を燃やすシーン。そしてルークが頻繁に漏らす"神話になってしまうと難しい"という言葉。これはスターウォーズにおけるファンとの関係性を明確に指していて、このコンテンツが先に進むべき道が"うるさ方"に閉ざされてしまっていること、そしてそれらを全て燃やし、解放することが描かれている。

人気を獲得して神話化した作品は、"神話サービス"をし続けるか"神話を裏切って作品になる"かを選ぶ時が必ずくる。エヴァンゲリオンでいうQ、MCUでいうエターナルズ。スターウォーズもまた、神話を裏切り作品になる道を取る。檻、捕縛、上下関係、そして閉ざされた洞窟からの脱出。冒頭から最後まで、一貫して"束縛からの解放"を描きつづける。これはサービスではなく映画なんだといわんばかりに。

そして"フォースの本質"に堂々と踏み込む。フォースとは何なのか。ジョージルーカスが禅から着想を経て編み込んだフォースという世界設定を、大胆に現代の物語に繋げて、それは"血筋"の話ではなく"そこらじゅうにある"と、今まで秘密主義的に守り抜いてきたフォースの神秘性を明確にしてオープンソース化する。

フォースでできることの拡張もすさまじく、宇宙空間での生存、フォース電話、そしてルークのフォースによるほぼ実在など。そして名もなき人々がフォースの存在に気づき始める。

善も悪もない、という価値観を持ち込んだデルトロの存在感もデカい!本当にジェダイ=善でシス=悪なのか?という問い、闇の力に惹かれつつ、浸っても全然平気なレイの存在、闇にいながらも光に惹かれるレン。人間は善とか悪とかで分けられるものではなく多面的で常に揺れ動いている。全ての人間がそうなっている。そう言った一つ一つの描写がパラレルな感じが、とても現代的な価値観で素晴らしい。

かつしっかりep5のオマージュにもなっているのがすごい。修行と潜入、シスの穴、ヨーダのように狂人として振る舞うルークなど、スターウォーズ愛を感じるシーンばかり。よくわからんクリーチャーもたくさん出てきて楽しいし、パペットのヨーダが出てくるのも嬉しい。あと、カイロレンの殺陣はオビワンの殺陣と並んでめちゃくちゃカッコいいな。

謎のギャグシーンが多いのだけは謎だ…
たかくらかずき

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