解

美女と野獣の解のレビュー・感想・評価

美女と野獣(2017年製作の映画)
3.1
 ミュージカル映画なので日本語字幕版で鑑賞しました。

 原作をはじめ、過去に製作された映画、アニメ、舞台ミュージカルなど一切鑑賞した事がなかったので、私にとっては初めて触れた「美女と野獣」でした。

 鑑賞してみると、18世紀の古典文学が現在でも商業映画として製作される出来の良いラブロマンス作品である事に感銘を受けました。構成や演出もとてもわかりやすくて、主人公の野獣とヒロインのベルの気持ちに自然と同調することができました。

 ヒロインのベル役を演じたエマ・ワトソンについてですが、個人的に今年の正月はハリー・ポッターシリーズを通しで鑑賞しましたので、彼女が少女だった頃からの成長記録としての目線で鑑賞することが出来ました。シリーズ最後の作品「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」は2011年製作ですので、2017年製作の本編までに6年の歳月が経過しており、すっかり大人の女性に成長していてとても綺麗でした。
 ただ、個人的には「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」あたりの頃のほうがスレンダーでよりスマートな8等身でしたので、あの頃が美しさのピークだったように思います。
 他に特筆しておきたい点としまして、どちらの役柄も「頭がよく活発な若い女性」であり、所謂じゃじゃ馬的な一面があるのは、もしかすると「彼女の性格を演出として取り入れているのでは?」と勘ぐっていまいました。実際本人がどういった性格なのか知りませんが、こういった勝手な妄想を膨らませるくらいにとてもチャーミングで自然な感じで役にハマっていました。

 その他の特筆しておきたい役者は、悪役のガストンの友人のル・フウ役のジョシュ・ギャッドです。彼はとても個性的で、才能の塊であり、演技、セリフ、唄と、とにかくとても楽しませて頂きました。

 あとベルの父親のモーリス役のケヴィン・クラインの演技もとても素晴らしかったです。ただモーリスの唄のシーンが無かったようなのでこの点は残念ですね。

 その他、素晴らしいと感じたのは圧巻の美術と照明の設計と演出による基本となるビジュアル面です。エマ・ワトソンが出演している事により、ハリー・ポッター的な既視感がありますが、時代や背景的にもロココ調を基準とした洗練されたイメージに心を奪われました。

 また、CGによる装飾品の各キャラクターも大変素晴らしく、それに加えてクレーン効果を織り交ぜたカメラワークで、とてもゴージャスな映像を演出できていました。キャラクター陣は各声優の演技とセリフが本当に良くまさに魂が宿っているようでした。

 ミュージカルなので音楽についても書いておきます。
 歌い手としては、王子の友人で燭台となったルミエール、箪笥となったスタンリー、ガストンの友人のル・フウが特に良かったです。
 エマ・ワトソンについては可も不可もなくと言ったところでした。
 BGMもそれなりに良かったです。

 ミュージカルシーンは吹替版では堪能できないと思い、字幕版で見ましたので、本当に役者達の力量と熱が伝わりました。ただテーマ曲のシーンで、松田聖子さんが唄う美女と野獣が脳内で再生されました。セリーヌ・ディオンさんの唄も知っているのですが、私にとっての声の記憶としては松田聖子さんのほうが強かったようです。

 最後に雑感としまして、ラストシーンに於ける白人と黒人のカップル率が高いのが気になりました。先週「ゲット・アウト」を見たばかりですので、勝手に「ここからホラー映画になるのでは?」とあらぬ想像をしました。
 恐らく映画の作り手としてのメッセージは「野獣と人の壁を超えた愛があるように、人種の壁を超えた愛もあり。心の姿を見て下さい」ということだろうと素直に受け取りました。とても良いメッセージだと思います。
解