アベ二ティKazumaAbe

エンドレス・ポエトリーのアベ二ティKazumaAbeのレビュー・感想・評価

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)
4.8
頭をぶん殴られるような衝撃。まるでホドロフスキーが記憶を基に見た夢をそのまま追体験するような2時間。すごく面白かった。極彩色の人々の詩的でクレイジーなやり取りで綴られる、情熱的で爽やかな青春譚。

すべてのスケールが前作『リアリティのダンス』以上だが、何より映像的な主張の強さがすごい。パパの頭、書き割りの街に蒸気機関車、「死者の日」を思わせる髑髏衣装、虹色の脚、黒子。その時その場でホドロフスキーが感じたすべてを実体化させたようなモチーフの数々は圧巻で、赤・白・黒と言った色が印象的に扱われ、一度みたら全部が脳裏から離れない。

若き失敗の日々を戯画的に見せることも意識したのか、今回は結構笑えるようなシーンも多い。地震の中で歌う母親に「ケーキを完成させなきゃ〜♬(ソプラノ)」と言わせたり、酒を求めて女連れでハッテン場に駆け込んだりする(「復讐のヴァギナだ!!!」)場面はかなり傑作だった。

これだけぶっ飛んでいても画面内の純粋、猥雑、怒涛の清濁が独特の生々しさを以って迫るのはすべて監督が実際に体感したことだからですよね。故にラスト、老ホドロフスキーが若き自身と父との別れを目の当たりにし「違う!こうじゃない!」と二人の間に乱入、ささやかな“フィクション”を込める所ではポロポロ泣いてしまった。あの日の後悔・やるせない思いを昇華し、作者自身を癒すのもまた創作の存在意義ということなんだろう。心身共に疲れ切った時に観たくなる作品でもあった。