キノピオ

太陽のキノピオのレビュー・感想・評価

太陽(2016年製作の映画)
3.8
舞台劇の原作を映画化しているので、明暗の差をハッキリさせるにしても、その落差が余りにも……

10年前の事件から、経済制裁を受け、やっと解かれた村落。バイオテロで人類は殆ど死滅したとはいえ、僅かに生き残り、まだ潜んでいるウィルスに怯えながら過ごす日々の中での生活は、普通の人間の心も疲弊させている。

そんな群像劇のなかでそれぞれの思いが交錯しながら進み、突然に10年前の事件を起こした人間が現れる事で、急転直下に話はラストへと向かう。
戦後しばらくまで都会と乖離した日本の村落では有り得た事も、そこが未来であっても衰退した世界で昔と同じ事を繰り返す人間の弱さも描かれていて、リアル感を大きくしている。

対比的に描かれるウィルス抗体を持つ人々は、ウィルスによって人間を超えたが、ウィルスによって失ったものはやはり大き過ぎるのか?

映画のラストは、やがて来る新しい世界の予感なのか、一時の夢なのか、観る者が迷ってしまう程になる。
キノピオ

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