アンタレス

完全なるチェックメイトのアンタレスのレビュー・感想・評価

完全なるチェックメイト(2014年製作の映画)
3.7
東西冷戦下の1972年。アイスランドはレイキャビクにて、歴史的瞬間が訪れる。
アメリカ人のボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)は最年少でグランドマスターになったほどの、チェスの天才である。しかし、精神面がナイーブなボビーは度々試合を放棄するなど、悪い意味でも目立つ存在であった。
チェスの大国、ソ連との交流を目的とした交流戦においてもその悪癖が垣間見え悪評は止まることは無かったが、同時にその才能はアメリカの英雄と呼ぶに相応しいものである。
そしてついに、現世界チャンピオンであるソ連のボリス・スパスキー(リーブ・シュレイバー)との世界チャンピオン決定戦が行われた。1局目でスパスキーに完敗し、2局目はいつもの悪癖で棄権したものの、3局目は見事に勝利。通常はドローを狙いにいく黒番、後に神の一手と称された打ち筋からの圧勝であった。そして、伝説となった6局目。彼の地レイキャビクにて、天才の真骨頂が披露される。


冷戦の最中、代理戦争の様相を見せ注目を集めていたスパスキー対フィッシャーの対局。
今現在でも定石として数多く指されているシシリアン・ディフェンスのオープニングでは、フィッシャーは白番、黒番、共に高い勝率を挙げている。しかし、6局目ではいきなりこのシシリアンのスタイルを崩し、スパスキーの用意していたシシリアン用の対策を無効化している。
この意外性こそ天才の所以であり、その点をラストでしっかり表現しきった脚本は見事。
トビー・マグワイアが、変人と呼ばれたほどのフィッシャーの奇行を細かく演じきっているのも見所である。
アンタレス

アンタレス