トメさん

レーサー/光と影のトメさんのレビュー・感想・評価

レーサー/光と影(2014年製作の映画)
3.4
人間(もちろん自分も)はスポーツごときで、心揺れ動かされるのだから、スポーツごときで心が潰されるぐらい弱い。


周りの人のプレッシャーが、トップアスリートを苦しめる話。あらすじでは、プレッシャーと書いてあったが、プレッシャーというより「期待」というか、もっとライトにいうと「応援」がトップアスリートを苦しめる話。

ロードレースにだけにかぎった話ではなく、どのスポーツにおいても期待や応援が、重荷になるケース例はある。その中でも、ロードレースはその重荷を逃す方法としてドーピングがあり、その効果が絶大という状況が、ロードレース界でドーピングが広く蔓延している(していた?)理由なのであろう。逆に、重荷を簡単に逃せられないスポーツはどうしてメンタルコントロールしているのかな。それを解放させられずに、潰れていくアスリートは他のスポーツにはいっぱいいるのかな。その側面で見てみると、もちろんいけないんだけど、ドーピングの良の側面というのも考えられて面白い。


ドーピングうんぬん関係なく、ここで、やはり大事なポイントは、応援というものは、人の背中を押してくれたりというポジティブな側面が、人を苦しめるということ。それは、過度に応援された人しかわからないことであるので、普通の人にはわからない。途中で、何もわからない学生たちの対談シーンがあるのだが、「自分の夢を叶えている仕事なのに、なんで苦しいの?」みたいな質問があり、そういった苦しみがファンとアスリートの間では、共有できていないという現状がある。そういう倫理感を植えつける授業や課外学習というのが、小学校とかからあってもいいのかなと思った。ファンあってのスポーツなのだから、ちゃんとしたファンを作るのもそのスポーツ協会だけでなく国レベルの義務だと思った。

スポーツのファンは、スポーツやアスリートから夢や活力を「得るもの(享受)」であって、「求めるもの(要求)」するものであってはいけない。

話は変わるが、その学生との対談の中で、「ロードレースのチームのなかのエース以外の人がかわいそう」みたいな発言があったが、それもやはりエースへの過度な期待や自分自身への重荷になって、プレッシャーになるというのも、ロードレースならではなのかな。

全体的に、ドーピングをしたアスリートを擁護をする(コーチや周りの人が悪者でという構図)流れだったが、単純にそれだけの側面にしてはいけない気もする。ただ、コーチもきっと選手のためという意図(言い訳)があったと思う。でも映像、映画にするとあそこまで悪い人に見えるし、きっとあの選手の人にもそう見えてた、見えるようになってくるのだろうということは大事なこと。どんだけ、その人のためでも、嫌な思いさせたらだめ。それ抜きでどうやって良い道に導くのかというのが、これからの社会で必要なこと。人間の高度な人間性の見せ所。そういうことを先輩、上司、先生は気をつけて過ごさないといけないことを教えてくれる。
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