ぴょん

軽蔑のぴょんのレビュー・感想・評価

軽蔑(1963年製作の映画)
3.6
「美はゆっくりから生まれる」

女優を美しく撮れる監督は素晴らしい。ゴダールの映画では常に、女優の美しさが際立っている。「勝手にしやがれ」のジーン セバーグ「気狂いピエロ」のアンナ カリーナ。そして「軽蔑」のブリジット バルドー。彼女のイメージとゴダールは全然結びつかないのだけど、B.Bのイメージはそのままに、ゴダール節炸裂の映画の中で見事なまでにカミーユとして存在している。

ある日突然、夫ポールに対して冷たい態度を取る妻カミーユ。もう愛がなくなったのだという。理由は死んでも言わないとのこと。
夫ポールは相手の出方でコロコロ態度を変える小心者。常に、答えを相手に委ねて生きている。「君の好きなようにしていいよ」と優しく言うけど、それって重大な決断を他人任せにして責任逃れしてるだけやん。的な。自分がない男なのである。そんな夫を軽蔑する妻は、終始不機嫌な顔をしている。その様子をB.Bは不機嫌な中にも悲しさや怒り、淋しさや呆れといったスパイスを効かせてとても絶妙な表情で演じ分けている。ネガティブな感情を表現する中でも美しさが失われないというのは、彼女の優雅な身のこなし方のせいかもしれない。歩き方や寝そべっているときのつま先の動かし方ひとつまで、不機嫌なはずなのにとてもゆっくりなのだ。決して肩をいからせてズカズカ歩いたり、足をバタバタしたりしない。そう相手を「軽蔑」して「もうこの人無理」って手放してしまうと、心に「余裕」が生まれるってことなのかも?そんなことを、B.Bは私に教えてくれた。

で、最後まで「軽蔑」の理由はわからないまま。まぁね。フランス映画ですから当然といえば当然の結末。

色使いが美しいのでそんなところも楽しんでほしい1本。
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