まえだ

セバスチャン・サルガド 地球へのラブレターのまえだのレビュー・感想・評価

4.7
「汝らは地の塩(the salt of the earth)なり」

元エコノミストの社会派の写真家、セバスチャン・サルガドの半生を、本人の静かな語り口をメインに紡ぎ出すドキュメンタリー。

彼の撮る人間たちの表情はどこか優しさを湛えていて、力強い。モノクロの明瞭なコントラストで映し出された顔たちが独特な空気を紡ぎ出し雄大な風景と調和する。瞬間的なダイナミズムの中にそこに生きるものたちの物語をまざまざと見せつけられ、写真の世界へと引き込まれる。

中南米の民族を映し出す「アザー・アメリカ」、砂漠の中で飢餓に苦しむ者たちに焦点を当てた「サヘル」、油井火災のダイナミズムを撮影した「ワーカーズ」、ルワンダで出国する難民を追った「エクソダス」など、旱魃、飢餓、そしてジェノサイドに至るまで克明に記録される世界のリアリティ。過酷で悲惨な現実に胸を痛めたサルガドは、妻レリアと共に故郷であるヴィドーリアの森林復興計画への着手を始め、地球へのオマージュ、「ジェネシス(起源)」へと繋がっていく。

残酷な現実と人間の狂気に真正面から向き合いながらも、我々の生きる世界への慈愛に満ちた、豊かなドキュメンタリーでした。
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