Kensho

お遊さまのKenshoのレビュー・感想・評価

お遊さま(1951年製作の映画)
4.9
溝口作品の個人的最高傑作だと思う。

ヴェネツィアで評価される前からすでに出来あがっている。3人の動線を巧みに活かしたトラヴェリングの長回しショットの強さはもうほとんどあれ以外あり得ないという程。

大胆さを恐れずに言うなら、今まで観てきた中でも一番ショットが美しい映画かもしれない。

そして、この作品の主題もやはり男の母親に対する愛が根本的にある。だからこそ堀雄二は(作品中では噂程度の話ではあったが)恋多き男、あるいは遊び人だったにも関わらず、あそこまで田中絹代に首ったけなのである。

作品中では何度も電車が過ぎゆく瞬間が切り取られており、それは小津的な空ショットとは対局の、同一ショット内に巧みに織り交ぜたものであり、作品の主題(母への愛)や同一ショット内の一見無関係な力学(過ぎゆく電車)という点を見ても(黒沢清のそれは室内のセット内の光による偽物の照明も含むが)やはりトウキョウソナタとの共通項を見出さずにはいられない。

溝口の移動撮影は絶対にミスショットになることはない。宮川一夫を起用した初作品ということもあるが、俳優に具体的な指示を出さずになぜここまで完璧に撮れるのか。
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