敏珂

ラ・ラ・ランドの敏珂のレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.5
その前評判や受賞実績から、かなり期待して観た。感想をひとことにぎゅっとして言うと、ワクワクして仕方ないする気持ちを起こしてくれるヴィジュアル的に大満足の作品。

劇中のマジカルロマンティックな雰囲気は『ムード・インディゴ うたかたの日々』(2013)や『500日のサマー』(2009)なども思い起こさせ、また同じく30,40年代からインスピレーションを得た作品でアカデミー賞を総ナメしたサイレント映画『アーティスト』(2011)より現代人に受けられやすい舞台背景、これまでのミュージカル映画へのオマージュも盛り込んだ、今までのものを確実に超えてきたミュージカル映画です。

ストーリーラインはシンプル、登場人物もミニマルで、シリアスなシーンもありつつ程よくクスッと笑うポイントまで全体に散りばめられているところが文句のつけようのない気持ちのいい作品。中でも注目したいのは主演の二人の演技の幅。タップダンスや歌に加え、ライアン・ゴスリングはごまかしなしのピアノのジャズ演奏を劇中で披露、なんと初心者として3ヶ月猛特訓したんだとか。演技面もカップルとしての共演を何度か重ねている主演の二人の「息のぴったりさ」、そしてエマ・ストーンの表情の豊かさが光る。だけど敢えて言うならば、もう少し二人とも歌唱力が欲しかったところ。ダンスシーンにおいては、二人のテクニックを細かく見せるほどの尺は取られていないものの、歌に関してはストーリー上でも重要な場面でのエマのソロが。彼女は歌は、練習されただけあって決して下手ではないとは思うのだけれど、1分以上声だけを魅せて場面をもたせるにはかなりの実力が必要とされるもの。それがいかに、歌って踊れて表情で魅せることに長けていた実際の30,40年代の俳優・女優が素敵だったかを思い出させてくれます。

また監督が『Whiplash/セッション』と同じということで話題を集めた本作、個人的には敢えて劇中音楽にももちろん胸を掴まれたけれど、同じくらいヴィジュアルの美しさを評価したいところ。オープニングシーンから鮮やかな衣装を身にまとったダンサーたちの華やかなダンスがワンカットで撮られているところなんかも注目ポイント。

2時間いっぱい美しい演技や歌、ダンスでロマンチックな夢を見せてくれる、そう言うエンターテイメント性において、フォームは現代版だけれどこれぞクラシックな映画だといえる作品、『ラ・ラ・ランド』。まるでリアルタイムで舞台を観るように、シーンの切り替えごとには堪らず拍手したくなるはず!

14/01/2017 Rio Cinemao
敏珂

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