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ラ・ラ・ランドのDolphinPaprikaのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
3.8
前作『セッション』と打って変わって、恋愛と夢との選択という部分に重きを置かれていることが目立つ。また『セッション』が全体的に暗い色調であったのに比べ、本作は華やかな街を舞台に衣装や美術も華麗に明るくデザインされていて、それがシネスコサイズの大画面に多分な彩りを与えていた。渋滞の高速道路で若者たちが車の上を一斉にホッピングしてみせたり、パープルな夜に美女が4人カラフルなドレスを纏って横並びで踊ってみせたり、愉しげなシーンで見せる画面いっぱいに広がるそういった美しさには涙腺を刺激するものがあり、これらミュージカル・パートは文句無しの100点満点だ。
互いの夢のため別離を選択したカップルのその後に織り成されるはずであった記憶たちが、始まりのきっかけとなったある曲の再生とともに二人の胸を同時に駆け巡る。その記憶はもちろん現実ではないにせよ幻と呼ぶのもどこか違う。レストランで熱いキスを交わし、手を取り舞い踊りしたあの数分間に凝縮された記憶は間違いなく二人にとっての事実であるし、結ばれさえしなかった二人の夢追い人が過去の成仏のため並行世界の記憶に微かながらにも触れることができたその瞬間だったと言うのがふさわしいだろう。そしてそれはこれまでいくつもの映画で奇跡や夢を叶え続けてきたロサンゼルスという街が特別に二人に魅せた細やかなプレゼントであったのかもしれない。

蛇足ではあるが映画『ラ・ラ・ランド』を観て、春日部咲が班目晴信からの愛の告白を断った末に口にした「そんな未来もあったかもね」という言葉が作り出した並行世界『Spotted Flower』という作品を思い出す。
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