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ラ・ラ・ランドのryutalosのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.2
昔から「夢」の話は苦手だ。
当たり前だが、その夢の重さ、デカさを2時間やそこらで描くというのは無理がある。
かと言って、「夢を諦められない!」なんて涙声で言われても冷めるし、そもそも応援しづらい。
そこで、何かしらの手法に頼らなければならないわけだ。

ヒーロー映画だったら一度破れた敵に立ち向かうための修行編、ハートフルドラマだったら失った家族愛を取り戻すための何かしらの機会、、、
「挫折」を乗り越える「努力」を描くのはもはや型になっている。

ララランドの場合、セブはメジャーで自分のやりたくない音楽を演らされる天才ピアニスト、ミアは不運な女優の卵だったわけだが、彼らの夢への障壁が「金」と「運」て。

は???

才能は持ってるベースですか、そうですか。

なめんなよ?

全てがその型通りになるべきというわけではないが、この映画は「挫折」があまりに弱い。
というより、主人公の努力が見えない、初めから努力させる必要がない、という設定のせいで、肝心の「夢」が矮小でチープな装置になってしまっている。

甘いわ、そんな簡単に成功するかハゲ。

これは多くの「夢追い人」だった大人にとって納得のいかなかった点なのではないか。
おそらくこの映画の評価が低い人は、もっとシビアで非情な現実を知っているがために、この嘘の現実に耐えられないのだろう。

ミュージカル映画にしたことで、恋愛の掘り下げもさほどできず、
自分の好きなことをやる夢、
好きな人と一緒になって家庭を持ってという夢、
良くも悪くも、欲張りすぎてどちらも中途半端になってしまった。
それをララランド、という架空の、理想郷を作り上げることで煙に巻く、というのがずるい気もするけどそれもあっての不思議な高揚感なのは間違いない。

とはいえ、映画としてはとても素敵で最高で、好きなシーンがいっぱい。
一番好きなのは、
冒頭ミアがパーティーに出かけるシーン。
4人の女の子が4色の原色のワンピースを翻がえしダンスするシーンは、やっぱ映画ってええなー!ってなってウルっとした。
その後の「うぉー!いい男とコネ見つけたるんやー!」って走って行くのも自然で良い。
マジックアワーを背景に丘でダンスするシーンは、ディズニー的で言わずもがな素敵だし、色んなシーンで使われるスタビでワンカットで追い回すカメラワークも気持ちいい。

ファッションが最高だね、オールディーズというか、古めかしいファッションが新しくて超可愛い。
エマストーンはちょっとアップがきついけど、カメラ引いたときの存在感はさすがでグッとくる。

メインテーマはやっぱめっちゃテンション上がるし、音楽もすごく良かった。
黒人のジャズかっこいい。
けど、繰り返し披露されるピアノの曲と、「スターの街」はあまり好きじゃなかったなあ。
全然良くない。

そういうのもあって、見終わったあとに持った「まとまりに欠ける、完璧でない映画」という感想は間違っていなかったけど、それがこの映画の魅力でもある。
完璧ではないのが人生ではないか、映画の中の話はおとぎ話だよ、と。
そんなわけで、私たちは現実と夢の世界を行ったりきたりさせられるわけである。
大作でありながら、手作りの自主映画のような感覚を覚えるのは、その箱庭的世界観だけではなく、アナログな手法にこだわった「懐古」主義によるものなのだ。

理想郷からの現実。
あのラストはなんとも味わい深い。
あの結末のおかげで、私たちはあの世界観の虜になり、映画館を後にしたあと夢の世界に思いを馳せ、お風呂の中でこの映画への愛着を高めていくのだ。
デイミアンチャゼル恐るべし。
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