虫山

ゴーイング・クリア: サイエントロジーと信仰という監禁の虫山のレビュー・感想・評価

4.3
サイエントロジーと言えば、今年初夏にミッション・インポッシブル新作公開を記念してトム・クルーズが来日するのに間に合わせるかのように、歌舞伎町を少し中野方面へ向かったところ、百人町あたりにとても立派なビルを突然建てていた。それまでも都内のどこかに日本支部があったようだけど、多分それとはとてもくらべものにならないほどの、本当に立派なビルを。
ところでサイエントロジーの名を知らない日本人は意外に多い。私は名前は知っていたけど、トム・クルーズが熱心な信者でSF作家が創始者のなんだかよく分からないカルト、という認識しか持ってなかったので、この映画によって「どのような宗教なのか」ということを知れることを期待していた。キリスト教にはキリスト教の、イスラム教にはイスラム教の、仏教には仏教の教えがあり、信者でなくても知ることができる。たくさんあるカルト宗教だって、まず教義ありきだから。
ところが驚くべきことに、サイエントロジーにおいて最も重要な「教え」は隠されていて、金を払い階級を昇っていきその最も最上部の階級の人間しか知ることはできない。
でも大丈夫です。この映画でその「教え」も元信者の告発によってだいたいどんな内容か明かされていて、しかも創始者ハバードが書いていたであろうSF小説の内容と多分そんなに装飾ないほどのモンだから。要するにこの宗教に入会するということは、陰謀「論」にすらなってない、創始者ハバード渾身のファンタジー小説を読むための権利を得るためにひたすら金を払い続けるということらしい。
それはさておき、この宗教団体の恐ろしいところは犯罪行為を普通にやってること。この映画に詳しく元信者(被害者)が告発しているけど、昔の話では無くて現在進行形の話なんですね。正直脱税くらいなもんだと思ったので、その点については驚いた。
調べようと思えばもっとこのカルト団体については知ることが出来るのだろうけど、この告発映画の特に優れている点は時系列順にサイエントロジーの「歴史」が語られている点であって、なんとなくしか知らない私みたいな人にとってはとても分かりやすい。元信者のポール・ハギス監督に始まり元上層部の人など、信者時代は完全なる黒歴史化している人達が、恥を忍んでそれでもなお実態を告発していることに敬意を表明したい。
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