あずき最中

二重生活のあずき最中のレビュー・感想・評価

二重生活(2016年製作の映画)
3.2
昨今の社会では、誰しも何らかの形で誰かに見られているのが当然のことになっている。しかし、監視カメラで見られていることよりも、人の目で見られているときの方が嫌悪感を抱くのはなぜだろう、と改めて感じた。
この作品では、ゴミ捨て場の定点カメラの視点が何度も挿入されるが、それに対する反発の様子はない。しかし、主人公の尾行が露見したときの、尾行対象者の観察者(主人公)への憎悪の感情がかなり際立つ。

どの役者も演技が上手く、その点では違和感を持つことはなかったが、設定(リアリティ)の面では疑問点があった。

・大学院哲学科修士2年の学生があのような研究態度はあり得るのか?
しかも、92点という評価も不透明。
(研究方法についてはどちらも他人にかなり頼っている)
・一度不倫がバレた男性がまた女子大生を抱こうとして(未遂)、説教モードになるのはいかがなものか。

といった点で、登場人物に共感できない場面が多々ある。
とくに、主人公の浅はかさにはほとほと呆れる。自分が悲劇のヒロインだからといっても、倫理観が乏しすぎる。いちいち泣くな、他人任せにするな、自分で考えろ、と言いたい。しかし、尾行によって優越していた彼女が終盤では逆に追い込まれる展開はあったので、そこで私のもやもやは晴れた(まあ、あの男も倫理観はないが、少なくとも責任は取っているのでまだマシ)。また、イラストレーターの彼は主人公と対象的かつ倫理観がある人間で良かった。

予想していた「尾行する者が尾行されるようになる」という展開は、あまり明らかにはされなかったが、個人的には、主人公は教授(あるいは教授の依頼で動く探偵)に尾行されていたのではないかと思う。
尾行を通じて、自己存在について考える、というテーマではあったが、それは日々他者と接し、自らを内省することとどう違うのか、がいまいち掴めなかった。
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