とし

この世界の片隅にのとしのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.3
週末に 『この世界の片隅に』を観てきました。 またもや、今年2016年に素晴らしい作品が登場してしまった。。

僕の事前情報は、
1) 戦時中の広島の話ってこと
2) クラウドファンディングで3000人もの方から支持され、4000万円ほど集めて映像化されたってこと
3) Filmarksでの評価が☆4.5というものすごい高い評価だったってこと
の3つでした。

原作も読んでいなかったので、この 不思議な世界観 にあっという間に引き込まれました。
戦争という扱いにくいテーマなのに、不思議と、痛々しさや辛さなどの絶望がほとんど感じない、何か優しさのある脚本と演出でした。

戦争のアニメというと、誰しもが『火垂るの墓』を思い出します。 戦争という過去の過ちを未来に伝えていくうえで、日本人であれば必ず一度は観なければならない作品です。 一方で『この世界の片隅に』という作品も、未来永劫伝えていきたい作品だなと。

とにかく、不思議ととてもポジティブな世界観。それでいて、全く 押し付けがましさもない。 主人公すずを取り巻く日常が本当に良く、テンポの良いリズムと、度々訪れる微笑ましい笑い、そんな演出が暗いテーマを見事に明るくしていました。

そして、のんに改名した能年玲奈さんの声もとても良かったです。 多分このアニメは彼女の声じゃなきゃここまで心に響かなかったかもしれないなと思うくらい、見事にマッチしていたし引き込まれました。本当に素晴らしかったです。

作って、食べて、働く、という当たり前の日常が、とても貴重でかけがえのない時間なんだと気付かされる一方で、 この世界の方々にとっては、戦争は非日常ではなく日常です。 とにかく生きているだけで幸せ、しかし、一方で死さえも全く恐れていない。今を生きるということが当たり前の世界。 だからこそ戦争が終わってしまったことで、そんな日常に対して平常心を保つ理由がなくなってしまう怖さ。 この時代の人達が精神的に強かったのは、戦争があったからだ、という逆説。陳腐な表現しか浮かばないけど、考えさせられる作品でした。

世界的にみても超がつくほど平和な日本ですが、この時代でも世界では戦争が繰り返されています。
世界平和を唱えるのは、言葉では簡単であっても、複雑な事象が絡み合うことによって、実現はなかなか難しい。
しかし、それでも その争いのある日常を想像してあげるだけで、救われる命が沢山あると思います。
世界中の多くの方に観て頂きたい。
この世界の片隅で、僕も健気にそして力強く生きていこうと思います。


↓ブログにも記しました。
http://tolehi.co/blog/konosekainokatasumini/
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