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この世界の片隅にのmmkのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
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なんだか、個人的な思いが詰まりすぎて、星つけられません。

一番驚いたのは原爆投下の瞬間の描写がこれまでに見た原爆関連作品の中でもっともリアリティを感じられたこと。
わたしの祖母は広島県の瀬戸内海のとある島で生まれ育ちました。
原爆投下の瞬間の8/6、午前8:15。畑で農作業をしていたら、ピカッと何かが光ってわずかに遅れてドーンと轟く音がして、振り返ると市内の方向大きなキノコ雲がもくもくと立ち上がっていたそうです。島だったので、すずさん達のように爆風まではさすがに来なかったそうですが。
祖母から聞いた話からも生々しさを感じていましたが、それが更に輪郭を帯びたような思いがしました。
木の窓枠が呉の方まで飛んできていたなんて初めて知りました。市内からはかなり距離があるのに。

最近つくづく思うのは、戦時中の中でも人々の普通の暮らしが存在して、その中で泣いたり笑ったり当たり前の日々が細々と存在していたんだなということ。
どんなに食べ物がなくてひもじくても、先日見送った近所の若者が遺骨さえもない姿で帰ってきても、空襲がきて爆弾がドカドカと花火のような音で落ちてきても、自由な表現が許されなくっても、
ちょっとした事がおかしくって憲兵さんに隠れてこっそり笑ったり、物が乏しい中でなんとか工夫して作ったご飯が美味しかったり不味かったり、密かな恋が心を温めてくれたり、
そこには人々の精一杯の温かな遣り取りの瞬間が確かに存在していた。どんな時代を生きてても、それは変わる事はないんだと思う。

そして、時には訳も分からない大きな流れに翻弄されるしか選択肢が無いんだということも思い知った。
ちょうど鑑賞したタイミングでNHKの100分で手塚治虫の再放送を見る機会があった。手塚治虫の作品から読み取れる諦観的視点は戦争体験から得られたものだろうというコメントがとても印象的だった。
訳が分からんままに大切なものや人を失っても、それでも生きていくしかないんだと思う。玉音放送の後にみんなで白米だけのご飯を炊いて食べるシーンを見ながら、そう思った。

特に邦画の戦争映画は悲壮感が溢れる事が多々あるから辛くてなかなか見れないんだけど、すずさんのほんわかした日常を通して戦時下の生活の手触りを感じる事ができました。嬉しい事も悲しい事も怒りも喜びも、伝わってきました。

コトリンゴのピアノと声がずーっと胸に残っている。
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