NaomiOe

この世界の片隅にのNaomiOeのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.0
パステルな色合いと幼い頃の寓話的なエピソードから始まった物語は、すずが成長するにつれ、昭和初期の日々の営みが細やかに描かれていく。
やがてきな臭い事変や身の回りの不自由がいつとはなく生じ、つましい庶民の生活に影を落としながらも淡々と時は刻々とあの日に近づいていく。
画面はパステルではなくなっていた。敗戦間近の厳しい空襲によって逃げ惑う人々と機上からののどかな呉の風景は鮮明な色彩と精密画で描かれる。
それはすずの心象の変化と同期しているのであろう。
今も世界の片隅で銃弾から逃げ惑う人々がいる。多くを失い、絶望の淵に立っている人々がいる。70年前に同じ場所に立ち、苦しんだ国民として、その解決に尽力できないことが悔しい。
そして、そこは片隅なのだろうか?自分の居る場所が世界の中心ではないか?心の中心ではないのか?そこに求める答えが埋もれている気がする。
NaomiOe

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