まえり

湯を沸かすほどの熱い愛のまえりのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
3.5
高評価が多い中、正直複雑な気分。

ラストシーンに関してホラーという感想も多いが、それがやりたかった映画であり象徴的なシーンだと思うので、そこはそんなに違和感はない。
ラストにタイトルがでーん!と出て回収感というかドヤ感があったのは陳腐で逆に冷めたけど…。

気持ち悪いのは、全ての登場人物が絶妙にどこかズレている点。
「いざというときのために」って娘にブラジャー渡すか?そしてそれをすんなり受け取るか?
イジメの起きる構造や、思春期の生徒たちの複雑な感情・関係性は描かれず、ただのイジメっ子/イジメられっ子という善悪二元論的な描き方、それに立ち向かうのが正義?もちろん余命僅かな母が、娘に逃げずに強く生きてほしいという思いがあるのは分かる。でも実際にクラスで下着姿になって訴えてイジメが解決することはありえない(むしろ悪化すると思う)。クラスで下着姿を晒すはめになった娘がその後堂々とクラスで生きていけるとも思えない。なぜ解決しましたみたいな雰囲気なのか?
ヒッチハイクの見ず知らずの青年を乗せる所はギリ理解できても、幼い母娘に対してラブホの話なんて普通しないし、それに対して普通に笑って会話してる違和感(このシーンは何のため?)。
義娘が安堵から失禁してしまうシーンや、この家にいていいですか?と泣くシーンも、監督のあえての演出と考えると、迫真さは伝わるものの、絶妙なキモさがある。

母は神ではないし、母の愛があればやることなすこと全て上手く転ぶほど、現実は上手くいかない。愛は決して物事を解決してくれる魔法ではないし、憎しみを生むことも、理解して貰えないこともある。

母の愛に対する信仰っていうのかな?
ダメ男で不器用な父と対照的に、母は強く自己犠牲も厭わない姿っていうのは、今を生きる女性を無意識に縛ってしまう美徳なのかなと思う。
まえり

まえり