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青春祭のmengruのレビュー・感想・評価

青春祭(1985年製作の映画)
4.7
主人公の顔立ちが随分整い過ぎているだろう、これはタイ族に対して漢族の民族的優位性を暗に示しているのか、それとも監督も気付いていない根深いバイアスの痕跡なのかと、映画の前半は若干気になったが、まー二人の男性に見初められる役柄だから、魅力が鑑賞者にも十分に伝わる人を選ばないといけなかったのだろう。でも役者さんは美形なだけじゃなくて、短いシーンでもああ境遇が変わったんだなと観客が分かるようなしっかりした演技力があったから良かった。今の時代、特定の民族や国を好意的に見せるときには、ますやっぱりおいしいそうな食べ物を見せると思うが、この監督の食べ物のシーンについては、部屋の中が焚火だから暗く、美味しそうに見せる工夫をあえて監督がしていないところも良い。タイ族の自然と共に生きる文化を映像で美化していないのにも関わらず、豊かさはしっかり伝わる。観客が少数民族に対してもつであろう偏見を主人公に仮託して、観客が主人公の体験を疑似体験しながらタイ族の生活を理解していくという、いわゆる教育映画のフォーマットをとってはいるが、ストーリー展開にスリリングな部分を入れ、様々なかたちの愛についても語ることで、鑑賞者の頭ではなく心にじわーっと染みてくる映画。異文化体験をどう撮るかという課題を考える上で一つの手本となる映画だろう。
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