MikiMickle

私はゴーストのMikiMickleのレビュー・感想・評価

私はゴースト(2012年製作の映画)
3.5
『私はゴースト』
2012年アメリカ映画
監督、H.P.メンドーサ

「霊がとりつくのは墓や家だけでない
心はあの世への回廊なのだ」
エミリー・ディキンソン

低いよどんだ音と、微かな哀しみに満ちた声とともに映し出される、誰もいない家。
突然の、まるでフィルム再生のミスのような鮮やかな色々。突然表れる白いドレスの女性。
そして、「I AM A GHOST」の文字。

このオープニングからなんだかみいってしまう。

白い服の女性、エミリー。
普通に目玉焼きを作り、陽の光の中で本を読み、箪笥のなかの何かをみて、パンを食べナイフをふりあげ、手に傷を負い、そして眠る。朝がくる。
繰り返される日常生活。
だが、度々家の中から聴こえる音。

どこからともなく聞こえてきた声は、
「あなたは幽霊なのよ」と告げる…

声の主はシルビアという霊媒師で、エミリーを成仏させようとやってきたのだ。
死んだ理由がわからないと成仏できないのだと…
しかし、いつも途中で逃げ出してしまうエミリーは、その記憶も忘れ、今までに何度も同じ事を繰り返していると…
エミリーは、シルヴィアと共に、自らの記憶を辿っていく…

そして、恐ろしい事実が…


この映画、完全に、幽霊目線で描かれています。
これはとても珍しい。
しかもシルヴィアは声のみなので、エミリー役のアンナ・イシダのほぼ一人芝居。

そして、繰り返される日常のシーン…
何度も、何度も、何度も…
こんなにしつこいのも珍しい。
シルヴィアとコンタクトをとったあともそのループは続いていきます。
死後、生前の記憶を失い、成仏するまで永遠に同じ事を繰り返していくと思うと、切なさが込み上げます…

しかし、続く続く…
低予算だから、同じ映像が何度も…

段々と過去と事実が明らかになっていくなか、
後半に突然の“やつ”の登場っっっ‼‼
うわぁっ‼と‼
これはネタバレすぎてなにも書けないけど、
エミリーの事実、恐ろしさとともに、“やつ”の繰り返してきたループについて考えるととても悲しくなり、
更に、そこからのループがやはり恐怖に満ちています…

死んでからもなお、苦悩するエミリー…
自分が死んでいるという事実がわかっただけでもショックだと思うのに、何もわからないまま悲しい過去を思い出し、謎の現象に遭遇し、事実を知り… 可哀想…
聞こえた声に怯えたり、「たかがオバケに何がわかるっていうのよ‼」と逆ギレしたりして、非常に人間味に溢れているんです…
死しても、人は人と思わされました…

映像は、昔のブラウン管を見ているような、角の丸く荒れた古風な作りになっており、後から2012年の映画だとわかるまで昔の映画かと思ってました。
その狭まった画面プラス、固定されたカメラアングルからは、家から出る事の出来ないエミリーの閉鎖的焦燥感を感じ、
時にわずかに歪む映像が、その不安感をかきたてます。
響くノイズ音や効果音は不気味さと恐怖を増長させてとても良いのです。
ゴシック調インテリアも良いです。

ラスト、色々考えてしまう…
死後の世界… 成仏とは…
このラスト、様々な解釈がとれると思います。観た人と語らいたくなるような映画。
難しい… まだ私にははっきりとした事が言えません… ラストだけでももう一度見なければ。

寝ちゃったけどw
MikiMickle

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