チッコーネ

ホールディング・ザ・マン -君を胸に抱いて-のチッコーネのレビュー・感想・評価

3.0
正直、またこういう映画がひとつ…、という感じ。

本作のようなラブストーリーが世界中に何千、何万とあったのはわかるし、決して忘れてはいけないものであることもわかる。
監督や製作者が強い思い入れを以て原作を映像化したこと、鑑賞者の好意的な反応も理解はできるのだが。

知識不足な層に改めて「ゲイ=エイズ」、「HIV感染=即死」のイメージを植え付けているようで、何だかため息が出てしまうのだ。
また国により、HIV治療の享受度に差があるという現実が、需要を助長しているような気もする。

ナチス映画などと同じく、今後何作も何作も、こういう作品が撮られていくのだろう。なぜならエイズ禍は近代の悲劇であると同時に、ドラマの宝庫だったからだ。
しかし『ロングタイム・コンパニオン』や『カーテンコール』、そして『フィラデルフィア』といったクラシックは、今から30年近く前に製作されたにも関わらず、基本的な内容は本作とほぼ同じである。

思わず作り手に「そろそろ感傷ビジネスから抜け出し、現代に即したHIV感染者のキャラクターを創造してみれば?それこそが映画の役目なのでは?」と注文したくなるのだ。