Mito

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐのMitoのレビュー・感想・評価

4.1
2016/10/14 字幕

沢山の劇場で長く上映される大作があれば限定された劇場でしか見れない作品もある。作中で「死後の評価」を語る者がいたが、この作品が来年再来年に語られることはあるのだろうか。
結論から言えば、素晴らしい映画でした。観るか悩んでる方がいたら是非観てきてください。静かで切なくて、こんなにも余韻の残る作品はなかなかありません。忘れ去られてしまうには勿体無いと思います。

この映画では、ある作家が編集者と出会い大成し別れるまで、つまり最初から最後までを描き切っています。話の中には「ここで終われば綺麗」というようなタイミングが何回かあって、それでもお話が続いていくので、綺麗な起承転結を見慣れた側としては違和感を感じます。しかし人の生き様を描くならば、おあつらえ向きの事件やロマンスにスポットを当てて起承転結を作るよりも今作の作りの方が本来は自然で、実話を語る姿勢の誠実さを感じました。

関わった人の人生を狂わせるような恐ろしい魅力を持つ女性を“ファムファタール(運命の女)”と呼ぶそうですが、この映画のトマス・ウルフはまさしく“運命の男”に見えました。
原題である「GENIUS」からも分かるように彼は天才で、自分の世界を持ち、周りを巻き込んで才能を開花させ、そしてふと去って行ってしまう。彼を愛した人々は、彼によって人生の豊かさを知り、彼によって傷つけられる。意図せずともそうしてしまうのが天才である所以なのでしょう。

恥ずかしながら劇中出てくる本を一冊も読んだことがありませんでしたが、それでも十分に楽しめる映画でした。(読んでから観ればもっと素敵な映画体験になると思います)
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