すとんこ

永い言い訳のすとんこのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
4.0
奥さんの献身の上にあぐらを掻いて生きてきた男に、突然降りかかる奥さんとの別離が、男の心情の変化を促すって話☆

何者でもなかった者が“先生”と呼ばれる身分になって肥大化した自我を無節操にさらけ出す醜さよ。
子供は作らないと共通認識のつもりだった価値観の押し付けも自覚せず、自身の正当性に微塵の疑いも持たない。
“男”とは自身の正当性、非凡さ、強靭性を立証するためならあらゆる労力を惜しまず、永い言い訳を弄する。

そんな“男”の代表たる主人公がアウト・オブ・コントロールなモノに触れたとき、彼自身も驚くべきリアクションを取っていることに気付かされる。こんなにも他人に優しく献身的になれるのか、感情的に怒り泣く事が出来るのか。

子育てを経ずに年齢を重ねてきた主人公が、擬似家族・擬似親子の関係を手に入れることによって変化する姿は、嬉しくもありちょっと悲しくもある。なんだろうこの気持ちは。わたくしはこの主人公に少なからずシンパシーを感じていたようです(往々にして、“男”とは自分のダメさを“可愛げ”と勘違いしているものだ)。

ビター・ホームコメディな作風を通じて、人間の複雑で掴みどころの無い心情を鋭く描いた一本(^_^)☆
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