だいき

永い言い訳のだいきのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
4.0
2016年公開映画120本目。

私たちから発せられる声という音は全て言い訳である。

人間関係が壊れたところから始まり、幸夫が新たな道を歩み、偽りの家庭のなかで育んでいくことで再生する姿が強く表れていた。
人間は愚かな生き物だから、失ってからしか大事なものに気付けない。
冒頭で幸夫をクズに見せ、かつ素晴らしい妻がいることも見せる。
ここにその後の展開で、幸夫という男を通じて人や人生を考えるきっかけとなるものが全て詰まっていた。
また幸夫と対照的な存在として陽一が登場するのも、多角的な視点で観ることを提供している。

一つ一つの台詞が深く、印象的な映像も多い。
目の前にいる人が突然いなくなった時、あの時一言声を掛けていれば、一目会っていればといった後悔を背負いながら生きていく人たちの人生を描くということに関しては成功と言ってもいい。

何故「長い」ではなく「永い」なのか。
「長い」には終りがある。
「永い」に終わりはない。
つまり生きている間はずっと言い訳をしているということだ。
自分の行動、言動、感情、思考全て、結局自らは正当化しているだけに過ぎない。
「永い」眠りにつくまで言い訳に終止符が打たれることはない。
でも自分と関わる他者が「永い」眠りについて急に消えてしまった時、ついてきた言い訳を振り返る時間が生まれる。
だから大切なことに気付くことができるのかもしれない。

ダメ男のクズな生き様を描いているようで実はすごく優しい作品である。
人生は他者だ。
だって自分は「永い」言い訳しかしていないのだから。
それを見た他者が人生を作ってくれる。
だから人との繋がりが必要とされていることが最も伝えたかったことではないだろうか。

言い訳が止む時は死ぬ時だ。
だいき

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